体験談15

私の体験談

「あれは忘れもしない夏の暑さが終わりこれから秋が訪れる予感を感じさせる満月の夜でした。

その夜、トースマスターズというウェブ検索でヒットしたスピーチクラブに出席することになっていました。その頃、仕事やプライベートでスピーチをする機会が激増し必要性にかられてのことでした。スピーチをする度に気持ちは伝わるんだけど筋立ててくれないとか気持ちが伝わらないとか言われてしまう始末。そのような折りにふとスピーチのうまい友人がトースト何とかに行っているのを思い出しインターネットで検索したのがトーストマスターズ道の始まりです。

その夜のメニューとしては日英合わせて4本のスピーチを聞くことができました。初めて参加した自分は右も左も分からないまま導かれるまま椅子に座り、頂いた紙を覗きこむとvoting とかevaluation とか良く分からない言葉が印刷されてあります。少し首をかしげているところへ隣に座られた恐らくベテランの方がこっそりと説明して頂きました。「voting は、選挙じゃないですけどベストスピーカーを選びます。また、evaluation とはみんなのスピーチをそれぞれ評価することです。」へぇ、そうなんだと感心してしまいました。

こういう文科系の習い事?だと、センセーという恐い存在がいるのですが見渡してみると先生がいない。
トーストマスターズには先生、生徒という関係がないということに何となく気がついたのでした。
とするとどこに学びあるんだろうかと沸々と考えてしまった現金な自分でした。先ほどまでは首をかしげていましたが今度はキョロキョロと大人げなくいもしないセンセとやらを探し始めました。
スピーチが終わり一分間の沈黙タイムがおとずれました。落ち着いて周囲を見渡しましたが皆さん手もとの紙をギロリと凝視して身じろぎもしない。数秒後、堰をきったかのように一気に鉛筆を走らせ紙にスピーチへの思いを綴ったようです。自分も思いをしたためようと思いましたが一分間の経つのが早いこと。
しかも途中で気が付いたのですがタイマーという時間を専門で計る人がおり律儀にもきっちりと一分間を伝えてくるではありませんか。光陰矢のごとしと感じた初めて瞬間でありました。
この短い沈黙のあとにそれぞれのスピーチに対しての論評をされる方々がおりそれがセンセがいない理由なんだと気がついたのであります。その論評の中で素晴らしい点のみではなくなんと改善点を伝えていたのは新鮮でした。指導者のいない場合、だいたい馴れ合いになってしまうのが多いですがここは違いしっかりとスピーチという形のないものを皆でとらえようとするのです。

皆さんのひとつひとつのスピーチに対する限りない愛を感じたのでした。スピーチをただするだけでなく論評されより良いものになっていく。その人一人のスピーチが皆さんのスピーチになっていく、そのような素晴らしい例会を経験しました。

そうか、このようにすればもしかしたら自分も自分らしい表現方法を身に付けられるかもしれない。しかも、みんなと前向きに取り組んでいくのが面白いなと感じたのです。

例会後に感想を求められる機会もありトーストマスターズのトーストの意味をパンでしょうかと思わず質問してしまいました。当時の自分を思い返すと恥ずかしさを感じますが今では乾杯という意味であると胸を張って言えます。

トーストマスターズ道を極めようともう半年過ぎました。今では自分も入会し、トースマスターズの皆さんとスピーチを楽しんでいます。

あれは忘れもしない夏の熱さとこれから訪れる楽しさを予感させる満足の夜でした。

これが私の初めてのトースマスターズの体験談になります。